旅の二十一:「着工!免震の家/上野原」
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
昨年はいくつもの台風の上陸、そして大被害をもたらした新潟中越地震、さらにはスマトラの津波と、日本、海外ともに多くの自然災害に見舞われた年でした。
我々建築士はそんな自然の脅威に耐え得るとともに、
異常気象の大きな原因ともいわれている二酸化炭素や温熱の廃棄による環境破壊をしないような家造りをめざしています。
それが耐震構造や高気密高断熱であったり、私が自宅で実践している土壁の活用や、太陽光発電だったりするのはいうまでもありません。
そんな昨今。今回は、私の仕事として、地元・上野原で
免震装置を採りいれて工事を進めている、個人住宅をご紹介します。
「和風の素晴らしい家を設計してほしい」。始まりは、お客さんのそんなご要望でした。
私は「ならば、屋根は瓦で葺きたいな!日本瓦の重厚さと銅板の柔らかさを生かして、堂々としつつ、優雅な家にしよう」と考え、そんなイメージから設計をスタートしました。
しかし、それからいろいろな紆余曲折があり、まだ記憶も新しい阪神大震災以降、いつ起きるかわからない地震を考えて、施主様の意向としては、崩れやすい瓦屋根は敬遠したいということに。
そこでご提案したのが免震装置でした。これを取り付けることで、瓦屋根をあきらめることなく、耐震性を実現することとなったのです。
免震装置は、地震時に屋根や建物の被害を低減するのはもちろん、家財を守るとともに、住む人が、揺れの恐怖から精神的に随分楽になります。そんなメリットから施主様も採用を納得してくださいました。
そして、昨年の2004年9月、杭工事に着手しました。
現場は数年前、盛土による造成を行っているため、まずは、元地盤の礫層まで杭を打ち込むことにしました。
建物の荷重を分散して、24本の鋼管杭を12.5m打ち込みました。
その後、杭の上部に、基礎の耐圧盤コンクリート。そして写真のような免震装置を設置し、さらに鉄骨造の架台を組み、木造軸組工法の建物を載せて組み上げました。
即ち、木造の建物を鉄骨架台でいったん受け、
免震装置を介して耐圧盤と杭による地盤で支える仕組みになっています。
地震時には、その免震装置を滑らせることによって、激しい揺れのエネルギーを低減し、ゆっくり揺らせることによって、地震の被害から免れるという構法です。
年末には上棟も無事済み、今後は、屋根の加工・組立と瓦葺きを順次進めて行きます。
それなりのコストは必要ですが、何より住む人の安全と、財産を守るために有効な免震の家。
当住宅は1~2ヶ月後には、床組の工程に入りますが、それまでは免震構法の構造が観られますので、興味のある方には、私がご案内し、説明さしあげたいと思っています。どうぞ、お気軽にご連絡ください。