旅の八(その1):2004年4月 「善教寺本堂/川崎」
今回は、私が設計し、かねてより工事が進められていた、神奈川県川崎市の善教寺本堂の上棟式が行われましたので、その工事のあらましを書きたいと思います。
本堂の設計のお話があったのが確か平成12年の初めでしたからもう足掛5年になります。
昨年の2月に着工し地盤改良、基礎工事、木工事の加工など工程が昨年中にほぼ終わり、今年になってから建て始め、3月27日に上棟式を行いました。
お寺や神社の建築では、檀家さんや氏子さんのいろいろな事情がありますので、このような長丁場になることは普通です。そのへんの「苦労」もお汲みいただき、お読み頂ければうれしいです(苦笑)。
2003年
2月 地鎮祭。善教寺本堂建設委員の皆さんと設計者である私や工事関係者が出席し善教寺住職さんがお経をあげて工事の安全と建物のご加護を祈願しました。
6月 釿始式。宮大工の仕事始めの儀式を古式に執り行いました。原寸検査、材料検品もあわせて行い、これから工事が本格的に始まります。その後、建物位置出し、遣り方。設計より約2m西側に移動した配置に変更。これは東側の道路境界までの距離を広くした近隣への配慮によるものです。
7月 地盤改良・基礎工事。地盤の土とセメント系固化材を混合攪拌し、固化させ地盤の耐力を増す方法を採用しました。その後、載荷試験により地盤の耐力を確認し基礎工事に着手しました。
8月 墨付け。原寸図にしたがって部材に加工するほぞやほぞ穴などのしるしを描く作業を進める。墨付けが進むにしたがって細部の納まりなどの検討をする。
9月 墨付けの終った部材から加工を始め、虹梁・大瓶束・斗供などの形状や曲線を検討し指示する作業がしばらくつづく。
11月 虹梁や肘木の彫刻加工も始まり、木工事の加工も大詰め。
2004年
1月 基壇の石張り工事に着手。基壇側壁に御影石を張り、その後、敷石、階段石を張り込む。
2月 立柱始め。快晴の中、内陣の丸柱から慎重に建て込みを始めた。今までは横たわった柱や梁を図面上や頭の中でイメージしたものが、組んで建ち上がるとその感激はひとしおで、いよいよここまで来たんだなとしみじみと見入ってしまいました(どんな仕事でも感慨があるんですよ!)。
3月 上棟式。立柱始めから一ヶ月。この間、建て込みも順調に進み、細部などの納まりの指示くらいで、特にトラブルも無く上棟式にこぎつけました。この日も前日までの花冷えのぐずついた天気とは一転して快晴。雅楽に合わせて入場し古式に法った素晴らしい上棟式となりました。