旅の十六:「完成、善教寺本堂/川崎」
今年の4月にご紹介した善教寺本堂が完成しましたので、その後の工事のあらましを、今回は書きたいと思います。
2004年
4月 上棟式も天気に恵まれ無事済み、小屋組や軒廻りの組立も順調に進んでいます。欅材は殆んど施主のお寺さんで用意して頂いたのですが、下から見上げても、見事なまでの太い梁を見ると安心させられます。
5月 箕の甲の詳細を詰めて、屋根下地も一段落。
建物は屋根で決まると言ってもいいくらい、建物に与える屋根のイメージは大きいと思うのです。
したがって、屋根下地には細心の注意を払い、設計コンセプト通りの、落着いた優しい雰囲気になりそうです。
施工図や原寸検査の中では、施工者との葛藤もいろいろとあったのですが、今回はあえて、私の善教寺本堂のイメージを通させて頂きました。
今はまだ皆さんにはお解りいただけないかも知れませんが、私は確かに実感しつつあります。いにしえの善教寺の再現を!
6月 内部の造作工事に着手すると共に、屋根の銅板葺きも着々と進行。
造作工事が進行するにしたがって詳細の納まりなど、詰めの打合せ。
法的にもクリアーし、イメージも損なわないように指示する日々がつづきます。
内陣の天井は、旧本堂に使われている天井絵を修復し、再利用する事に決定。
古い物は歴史的財産。使える物は残さなきゃ!
ちなみに、向拝の蟇股と木鼻も旧本堂に使われていた物の再利用です。
7月 木製建具の最終的な打合せ。
私としては、古来の手法による舞良戸や板戸による設計でしたかったのですが、実際にここを使用される住職さん達の意向を尊重し、内部建具を襖などに設計変更。
8月 左官工事の漆喰塗りも急ピッチで進み、いよいよ工事も大詰め。
足場の取れる日も間近。
9月 足場が外れ、善教寺本堂の全容があらわに!
ほぼ私のイメージ通りに出来上がりました。
住職さん、壇信徒の皆さん如何でしょう?ご満足頂けるでしょうか?
私はきっと気に入って頂けると確信しています!
後は、役所の法的な完了検査と、住職さんや壇信徒の皆さんの引渡し検査です。
10月 お施主さんの引渡し検査も、役所の完了検査も無事合格し、やっと工事も終わりです。しかし、善教寺本堂新築プロジェクトは、まだ終わりではありません。
旧本堂の取壊し、そして、その跡地に書庫新築工事などが残されています。
もう一年、いやいや、これからもずっーと善教寺さんとお付き合いさせていただきます。よろしくお願いします。
本堂完成にあたり、善教寺の住職さんを始め、奥さん、壇信徒の皆様方から
「私たちの想いをはるかに超えた素晴らしい本堂を設計して頂き感謝の言葉もないほど、感激しています」との、ありがたいお言葉を頂戴いたしました。
長い間、精魂込めて携わらせて頂いた努力が伝わった思いで、こちらこそ感激です。
また、私の考え方は間違っていなかったんだな、と改めてうれしく思いました。
この善教寺本堂は、実は本堂建築新築としては私の初の経験だったのですが、これまで培った古建築の知識をすべて注ぎ込んで設計しましたから、いい建物が出来る自信はありました。
しかし、実績も無い私を信頼して頂いた皆様に、私こそ感謝を申し上げたい気持ちでいっぱいです。
本当にありがとうございました。