旅の七:2004年3月 「ミャンマー/ヤンゴン」
しばらくのご無沙汰でした。実は仕事でミャンマーに行ってきました。
帰ってきたら風邪をひいてしまい更新が遅くなりました。なんせ、ミャンマーは日中36~7°もあり、毎日暑くて!・・・帰ってきたら日本の寒い事寒い事、別世界ですわ!
ところで何でミャンマーかと言うと、私はかねてより、地元・上野原の保福寺というお寺の本堂の設計を手掛けておりまして、その本堂に使うチーク材の視察などのためにミャンマーのヤンゴンに行ってきた、というわけです。
まずは、チークの説明をしましょう。
チークは耐久性・耐水性・耐侯性・耐磨耗性そして抗菌・防虫性等に優れ、反り、狂いや割れが少なく、加工性も非常に優れた、建築材としては最高の木なんです。したがって古来より豪華客船や高級クルーザーの内装や甲板材、高級家具やドア、彫刻物などに使用されています。現在もそのような高級材としても当然使用されていますが、住宅などのフローリングとしても広く使われています。しかし、チークでも産地によって品質が若干違います。ミャンマー産は本チークあるいはミャンマーチーク、ビルマチークと呼ばれる天然材で、インドネシアやマレーシア産のグリーンチークと呼ばれる植林チークと区別しています。
その中でも今回、保福寺本堂で使われるチークは特にゴールデンチークと呼ばれるもので、ミャンマー産チークの中でも最高の材料です。日本では品薄で希少価値が高いと言われているミャンマー産チーク。なんでそんな材料が、しかもお寺の本堂に使うほど大量に入るのか?その理由、実はミャンマー政府の特別のご配慮によるもの。詳しいことは長くなるので省略するとして、そんなこんなで、今回の旅は、そのミャンマー政府に敬意を表しての「表敬訪問 」という目的もありました。
そうしたわけもあり、彼の地では、政府の宗教大臣や森林大臣あるいはミャンマーの高僧とのセレモニーを行いました。報道機関もテレビ局2社、新聞3社が取材にやって来て、ミャンマーでは大々的に取り上げて頂きました。セレモニーの中で印象に残る言葉のやり取りがありました。保福寺の住職さんが「こうしてミャンマーのチーク材を私共のお寺に使わせて頂けるのも仏様(お釈迦様)のお導きによるものですね」との問いに、宗教大臣は「いえ、前世では私たちが兄弟だったのかも知れませんよ!今後とも家族的なお付き合いをしたいですね」とおっしゃいました。この答えに、仏教の繋がりとは言え、我々一同は感銘致しました。
こうしてセレモニーが終了し、翌日からチーク材の視察とヤンゴン市内の寺院を見学しました。チーク材置場はヤンゴン市の郊外にあり、広い敷地にチークの原木が野積みされていました。日本ではチーク材は無いと言われているのに、あるわあるわ、まさに、目から鱗って感じでした。次にシュエダゴンパゴダに行きました。前日もセレモニーで訪れてはいたのですが、じっくりと時間をかけて参拝いたしました。2500年前お釈迦様の聖髪を納めた仏舎利塔。高さ100mにも及ぶこの塔は、金の延べ板と金箔で包まれ、上部には6000個ものダイヤモンドやルビーが散りばめられるという豪華さ。ちなみにダイヤは全部で2000カラット(!)にもなるそうです。
その大きさと輝きには、圧倒されます。そして、その周囲には大勢の市民が大人から子供まで跪き、祈りを捧げていました。
仏教はインドからこのミャンマーなどを経て日本に伝わってきたのですが、建物も思想も日本とはかなり違うなと実感させられました。
パゴダもすごいな!とは思いましたが、私はやっぱり日本の建築が好きです。日本で独自に育まれた様式を大切にしながら、素晴らしいチーク材を活かして、保福寺本堂を築き上げられる事を確信できた、そんなミャンマーの旅でした。