旅の百五:「伊能忠敬旧宅/香取市」
先日、千葉県香取市佐原にある伊能忠敬旧宅を建物の調査で訪ねました。
今回の調査の目的は、東日本大震災での被害状況と修理に
ついてであり、私の仕事は、建物の現状図面作成による
実測調査でした。
東日本大震災の発生から半年が経ちましたが、佐原でも
地震の被害は大きく、いたる所にブルーシートが掛けられて
いました。実は15年ほど前、伊能忠敬旧宅の店部分の修理
工事の際に、現状図面と復原の調査のために私はこの佐原に来ているのですが、その時のイメージとは異なり、
ブルーシートで覆われた姿は、やはりショックでした!
今回の調査のメインは、その店部分に取り付いている書院と
言われている建物です。経年による劣化で、以前からかなり
傷んでいたのが、この震災でさらにダメージを受けたことで
調査することになりました。
伊能忠敬旧宅は小野川沿いに店と門が並び、奥に炊事場を
挟んで書院が続きます。さらに屋敷の南側には2階建て
土蔵があり、3棟により構成されています。
書院は伊能忠敬が49歳(寛政5年1793)の時に、彼自らが
設計して建てられたものと伝えられています。ただし、翌々年の寛政7年には江戸に出て、測量の勉強を始めていたよう
なので、彼自身はこの書院には僅かな間しか暮らしてはいないようです。
書院の間取りは東側に土間の出入口があり、土間を上がると
6畳、奥に8畳床の間付きの座敷、更に西と南側に縁廊下を
廻らせてあります。6畳の右には式台の付いた6畳、左側には3畳、その奥に6畳があり、炊事場へと続き、店に繋がります。便所は縁廊下の東南側の端に、新築後早い時期に増築されています。平屋建て桟瓦葺きの簡素な建物ですが、15年前に
訪ねた時に比べると、やはり劣化が著しく、軸部の傾斜が
目立ちました。
今後、伊能家の修理工事も始まると思いますが、佐原は
重要伝統的建造物保存地区でもあります。この水郷の街・
佐原も、一日も早く復旧してほしいと思います。