旅の百二十一:「札幌の建築、その2/北海道札幌市」
前回に引き続き、札幌の建築をご紹介します。
北海道大学には第二農場の他にも、いくつも古くから残されてきた歴史的な建築があります。そうです!北海道に行くと必ずととっていいほど立ち寄るのが札幌時計台。
旅の五十五で紹介していますので、ここは写真のみとします。そして、北大植物園博物館。明治10年に開拓使が札幌偕楽園に設置した札幌仮博物館が始まりとされ、資料など収蔵品の増加から、明治15年に建てられた新館が現在の博物館本館です。そもそも、この博物館は、開拓使が北海道の自然などを展示公開する場として、東京に仮博物館を設置し、東京での広報活動を行い、並行して、北海道に移住した人たちへの教育を目的として創設されたようです。
その後、明治18年には倉庫、明治34年には事務所が建てられています。
それでは、建物のご紹介をします。
北大植物園博物館は、明治15年に建てられた博物館で、博物館建築としては日本最古です。木造2階建、鉄板葺き、外壁下見板張り、妻部は竪羽目板張りハーフティンバー。当初より博物館として建てられているため、展示ケースも建物と一体となって造られており、ガラスの一部には明治の手焼きガラス(歪んだガラス)も残されています。
次に、博物館倉庫。明治18年に建てられた、木造平屋建てマンサード屋根鉄板葺き、外壁下見板張り。当初は切妻造こけら葺きだったものを大正時代にマンサード屋根に変えてドーマー窓を付け、小屋裏を収納とし倉庫としての空間を確保したようです。
博物館事務所は、明治34年竣工の木造平屋建て寄棟造桟瓦葺き、外壁下見板張り腰竪羽目板張り。
内部は正面の中央と両側の2室の3室で形成されています。
博物館便所は、明治15年に建てられましたが、大正7年に老朽化のため取り壊され、北大キャンパス内の理化学・地質学教室の裏手にあったものを移築したのが現在の建物です。
明治36年に建てられたこの便所は木造平屋建て切妻造、下見板張りの3坪の建物で、内部は男女に分けられており水洗式便器が設置されています。
博物館鳥舎。いわゆる鳥小屋です。大正13年に孔雀飼育用に建てられたもので、片流れ造の内部は2室に分けられ、外部の鉄パイプで囲まれた部分は金網を貼り、運動場として使用していました。
植物園門衛所。明治44年に植物園の一般公開に合わせて建てられました。木造平屋建て切妻造スレート葺き、
一部八角形の張り出し付き、下見板張り腰竪羽目板張りの建物です。八角形部分は見張所で、切妻部分の本体部は宿直室になっており、現在も閉園時間に守衛さんが使用しています。
ここまでのご紹介した建物は全て国の重要文化財です。
最後にもう一棟、国の登録文化財でもあるバチェラー記念館をご紹介します。アイヌ民族の教育と文化の向上に努め、アイヌの父と呼ばれたイギリス人宣教師バチェラーが居住していた建物です。明治31年に植物園の東側に建てられました。木造2階建て寄棟造鉄板葺き、外壁下見板張りで、昭和15年に太平洋戦争が始まると敵性外国人として帰国させられるまでバチェラーが暮らしていました。
その後、昭和37年に北海道から寄贈され、植物園内に移築しました。
北大植物園博物館の歴史的建造物は以上です。
この他にも北大には古河記念講堂や旧札幌農学校昆虫・養蚕学教室、旧札幌農学校図書館読書室・書庫などが
あります。
次に、豊平館をご紹介します。豊平館も旅の五十五で紹介していますので、概要は省略しますが、現在修理工事中で、今回、特別に現場を見学させて頂きましたので、修理状況をご紹介いたします。
豊平館は平成24年7月より平成27年12月まで、耐震補強工事を主体とした修復工事を行っています。
耐震診断を行い、その結果に基づいて耐震補強計画を策定し、実施して行くことになります。現場の方は、建物全体を覆う素屋根が掛けられ、既に床や壁が解体されていました。
壁の内部には、筋違と思しき斜め材が入っていましたが、果たして効いていたんでしょうか?耐震補強をどのように行うのか、現在検討中のようですが、いずれにしてもこれだけ広い空間を支える構造体の補強が行われたあかつきには、蘇った豊平館をまた訪ねてみたいと思います。
最後に、北海道庁旧本庁舎。明治21年に竣工した、煉瓦造2階建て地下1階寄棟造スレート葺きのネオ・バロック様式の建物です。煉瓦積の要所に石材を用い、外壁には柱型と二重アーチをあしらい、八角の張り出しを設けた重厚感のある大規模な煉瓦造建築です。
北海道は今頃とってもいい季節だと思います。
旅行や何か所用の折、ちょっと時間を見つけて訪ねて頂けたら幸いです。