旅の五十五:「全国大会と北海道の建築」
先日、北海道で建築士会の全国大会が開催されました。
今回はその折に訪ねた北海道の建築をご紹介したいと
思います。
第50回建築士会北海道大会は帯広市のとかちプラザをメイン会場とし、「北の開拓地で誓う 建築士の使命」~地域に
根ざした もの・まち・くらしづくり~を大会テーマとして開催されました。
台風9号が去った9月8日の早朝羽田を経ち、台風を追いかけるように北海道に入りました。降り立った千歳空港の路面は
濡れ、水たまりがあちこちにあり、さっきまで雨が降っていた
のを物語っていました。
その後、北海道大会の会場である帯広市へ向かい、
全国大会に参加しました。全国から集まった建築士の仲間が右往左往する会場内をまわりながら、関ブロ大会で見知った
仲間たちと言葉を交わし、悪天候の旅路をねぎらいながら
親交を深めました。
全国大会はそこそこにして、北海道の建築見学ツアーとなり
ました。ところで、北海道を訪れるの、私は初めてだったん
です。何の予備知識もないまま参加し、今回のツアーの企画をしていただいた青年部の見学コースに従って廻ってきました。
帯広市内では象設計集団の設計した北海道ホテルと
JICA帯広を見学し、トマムのザ・タワーと言う36階建ての
超高層ホテルに宿泊し1日目は終了しました。しかし、なんで
北海道の広い大地に超高層なんでしょう?企画された方の
コンセプトがよく解らないまま寝ちゃいました。
2日目はトマム内にある安藤忠雄さんが設計した水の教会を
見学し、その後、札幌市内に入り、やはり安藤忠雄さん設計の渡辺淳一文学館を訪ねました。どちらも安藤忠雄さんらしい
コンクリート打ち放しの建物でした。最近のこの手の建物は
私にはよく解りませんのでコメントは差し控えたいと思います。
次は重要文化財豊平館。こちらは私の専門でもありますので、少し説明します。ここは、北方開拓のため明治2年から
明治15年まで置かれた官庁である北海道開拓使(廃止後、
札幌県、函館県、根室県が設立されました)が西洋風ホテル
として建築した木造2階建亜鉛引き鉄板葺きの建物です。
明治13年完成し、明治天皇が最初の宿泊者となり、明治14年
8月開館しました。当初、北1条西1丁目、現在のテレビ塔付近にあった建物は、昭和33年現在の中島公園に移築され、
昭和39年重要文化財に指定、昭和57年から5ヵ年かけて修復工事が行われました。白い壁を縁取るウルトラマリンブルーは当初の配色を復原したものです。
そして次は、札幌と言えば時計台。その時計塔を戴く旧札幌
農学校演武場を訪ねました。「演武場?」と奇異に思う方も
いらっしゃるでしょうが、この時計台は、もともと北海道大学の前身である札幌農学校の演武場で、明治11年(1878)に
W・S・クラークの後任として教頭となったW・ホイラーによって構想されたもの。もっともホイラーの描いた略平面図に“ Military Hall ”と記されてたため、そう呼称されていますが、
実際は教練に使われ、時代が下ると講演会や卒業式に使われていたそうです。構造は、当時アメリカ中西部で流行していた
バルーンフレーム構造をモデルとしたものです。
これは、19世紀にアメリカで発達した工法で、間柱の骨組に
下見板張りの外装板を張付けて組立てる木構造。間柱構造
とも言い、後に枠組壁工法として広く普及しました。時計台の
シンボルでもある時計塔の4面に文字盤を付けた大時計は
ボストンハワード社製の機械式塔時計ですが、これは当初からのものではなく、当初は屋根の上に鐘楼が造られ、小さな鐘を鳴らして始業・終業を知らせていたようです。開拓長官黒田氏の発案により、その後、機械式塔時計の設置が進められ、
3年後の明治14年に現在の姿に改められました。
3日目はまず、A・レーモンドの設計した木造平屋建ての教会「札幌聖ミカエル教会」。昭和35年竣工の建物ですが、丸太を
トラス状に組んだ小屋組が力強くレーモンドらしいおもしろい
建築でした。次はモエレ沼公園。イサムノグチが基本設計を
行い「公園全体をひとつの彫刻とみなした」と言うように、
自然やオブジェ、建物がそれぞれ芸術作品のようでした。
残念なことにイサムノグチはマスタープランを完成した後
亡くなられたようですが、遺志を受け継ぎ完成した公園は
素晴らしかったです。その後、札幌ドームを経て小樽に入り、
にしん御殿の旧青山別邸。ここは贅沢三昧の豪華絢爛な
建物で私はあまり好きではありませんでした。
そして、最後に旧日本郵船小樽支店。明治39年に完成した
石造2階建て亜鉛引鉄板葺きの重厚な建物で明治後期の
代表的な石造建築です。
駆け足で飛び回った3日間でしたがいろんな建物が見られて、私だけでは絶対行かない建物もたくさん見ることが出来ました。各建物の写真を見ていただいて、北海道旅行の折に参考にして頂ければ幸いです。