旅の五十六:「韓国の建築」
先日、韓国に行ってきました。実は私、上野原ライオンズクラブに所属しているのですが、そのライオンズクラブの東洋・東南アジア・ライオンズフォーラムが韓国のテグ・ワールドカップスタジアムで開催され、これに参加してきた、というわけです。今回はその折に訪ねた韓国の建築についてご紹介したいと思い
ます。
韓国を訪れるのは初めてだったので、まず「どんなとこなんだろう?」と純粋な興味がありました。そして、かの国の建築は仏教伝来と共に日本に大きな
影響を与えた、日本寺院建築のルーツでもありますので、どんなお寺がある
のかに、とりわけ興味がありました。
金浦空港に降り立った私たちはソウル市内に向かい、まず、最初に訪ねた
のはNソウルタワー。南山(海抜243m)の頂上付近に建っており、タワーの
高さは236m。展望台からはソウル市内が一望できました。
次に訪ねたのは南山韓屋村(ナムサン ハノクマウル)。朝鮮時代の伝統
家屋を復元した民家園とでもいうのでしょうか。伝統家屋「韓屋」(ハノク)には生活用品など民俗工芸品が多く展示されており、韓国の文化を身近に見る
ことができました。建築的には日本の寺院と良く似ています。強く反り上がった軒や瓦の葺き方などに違いはあるものの、日本の奈良時代の建物との
共通点も多く、日本寺院建築のルーツなんだな、と興味深く見させて頂き
ました。少し詳しく説明すると、柱は礎石の上に立ち柱上に丸桁(ガギョウ)が載っています。丸桁は言葉通り丸い桁でした、日本では奈良時代の建築の
唐招提寺金堂などで丸くした桁が使われていますが、それ以降は角形になり、丸桁は名称のみとなっています。垂木は地垂木が丸、飛檐垂木は角で
放射線上に配した扇垂木。こちらの丸い地垂木も丸桁と同様に、日本では
奈良時代の建物しか遺構は残されていません。また、扇垂木は日本では鎌倉時代に禅宗様として入ってきており、それ以前はありませんでした。
この南山韓屋村で、もう一つ大変興味深かったのが、韓国ではオンドルと呼ぶ床下の空調構造。いま日本でも流行りの床暖房の一種です。焚口で薪に火をつけ、暖かい煙を床下に充満させて床を温め、煙突から煙を出すという構造で、この村の家屋でも、実際、床下に火を焚く口が設けられており、煙を出す煙突も付けられていました。ただこれはこれで暖かいけれど、それなりに火災も多かったようです。
その後、国立中央博物館、明洞(ミョンドン)などを見学して一日目が終了
しました。
二日目は、ソウル駅から韓国高速鉄道KTXに乗り東テグ駅へ、そして、東洋・東南アジア・ライオンズフォーラムが開催されるテグ・ワールドカップスタジアムへ向かいました。広い会場はたくさんの人であふれ、ライオンズの組織の
大きさに驚きました。
フォーラム終了後、慶州にある、世界文化遺産の仏国寺を訪ねました。
仏国寺の創建は528年。当初は華厳仏国寺、法流寺と呼ばれていましたが、寺院そのものは751年から774年にかけて工事が進められて、完成した時に
仏国寺と名付けられたとのこと。その後、1592~1598年の豊臣秀吉による
朝鮮侵略戦争(文禄・慶長の役)により、建物全てが焼失しましたが、
1604年頃から再建を始めて約200年をかけて復興、1973年には現在の姿まで復元されたそうです。
「仏国寺」と大きく掲げられた門をくぐり寺領へと入ると、天王門と書かれた
大きな門を通り、さらに奥に進みました。しばらくすると韓国の音楽で
素晴らしい歌声が聞こえてきました。仏教の音楽なのでしょうが、その旋律に耳を傾けながら各建物を見て回りました。どの建物も鮮やかに彩色が施されるとともに、細部のデザインや様式は日本の寺院とは違うものの、その他では
共通点も多く、こうした大陸の建築が日本に渡り、独自の進化を遂げたのが
日本建築なんだな!と改めて思いました。
この日は慶州に宿泊し、翌日の三日目は東テグ駅から韓国高速鉄道KTXに乗りソウルに戻り、市内で南大門市場や梨泰院を散策して帰路となりました。
あっという間の3日間でしたが、韓国の文化や歴史的建造物を見学して、
なおさら日本建築の良さが解ったような気がします。いわゆる日本再発見、
ディスカバージャパン(古い!)となった旅でした。