旅の五十二:「養福寺本堂上棟/大月市」
先日、私が設計監理を担当し、かねてより工事が進められてる、
大月市猿橋町の養福寺本堂新築工事の上棟式が行われました。
今回はその工事についてご紹介したいと思います。
養福寺は、古文書等の言い伝えによると、約700年前の鎌倉時代に、当時、長徳寺が桂川の大洪水で流され、現在の高台に移転したのがはじまりとされています。大災害で極度に疲弊した村は寺を再建することができず、室町時代には多数の僧呂により再興をはかられましたが、寺院としての資格が
得られず、小寺は荒れるのみでした。その後、瑞林祖雲禅師が布教に訪れ、寺院再興を祈願し、村の人々と苦難を重ね本堂庫裏が再建されました。
この時に臨済宗に改宗し建長寺の末寺となり金鴛山養福寺として開山
しました。
現在の本堂は、その後、改築されたもので老朽化が著しく、近年、壇信徒に
よる再建機運が高まり本堂新築の運びとなりました。
私が本堂新築工事のお話をいただいたのは、約5年も前に遡ります。
企画案の作成、基本設計、建設委員会の承認、そして実施設計。一口に
言えばこういったことなんですが、その間には大変な紆余曲折がありました。
どの仕事でも言えることなのでしょうが、一つの仕事をまとめるまでには
いろんなことがありますよね!
そして、昨年の丁度今頃、施工業者の選定と入札を行い請負契約締結
しました。その後、工事に着手し、原寸図作成、製材、墨付け、刻みと順調に進み、今年の2月に現本堂の解体法要を行い、解体撤去しました。3月6日には近隣のご住職が参加していただいて法要を行い、地鎮祭を執り行いました。その後、基礎工事に着手し、ダブル配筋の耐圧盤で強固な基礎が完成し、
この6月5日に立柱し、建て方を始めました。そして、6月30日、やっと上棟にたどり着きました。その間、梅雨のまっただなか、雨の心配をしたのですが、
今年は雨が少なく順調に進みホッと一安心してるところです。
本堂の構造形式は、桁行6間半、梁間5間半。入母屋造り銅板葺き、側廻りの柱上に舟肘木を載せ、軒は一軒疎ら垂木、妻飾りは、伝統的な叉首組としています。予算の関係で本格的な禅宗様建築とはいきませんでしたが、
私の意識としては、臨済宗で再興された室町時代末頃のイメージで、
禅宗様の特徴である強い軒反りなどを取り入れて設計しています。
これまでのさまざまな紆余曲折に加えて、施工を担当している工務店さんが
社寺建築が始めてということもあり、まだまだ、予想外の場面に出会うこととは思いますが、関係者の皆様と共に頑張って行きたいと思います。
ご関係の皆様、よろしくお願いいたします。
養福寺は、国道20号の鳥沢キグナスガソリンスタンド東側の交差点を南に
入り、桂川を渡った向こう側です。近くにお越しの際、ちょっと立ち寄って
頂けましたら幸いです。
また、完成したころに報告したいと思います。