「保福寺本堂 軒廻り組立」
残暑お見舞い申し上げます。毎日、暑い日が続いていますが、皆様、如何お過ごしでしょう?私は、地区の盆踊りなど、役がらみの行事が続き、更新も遅くなってしまいました。一段落した所で気を取り直しての建築旅日記です。今回も前回に引き続き、保福寺本堂新築工事の進捗状況について報告いたします。
残暑が続く中ですが、保福寺本堂新築工事は、若干の遅れはあるものの、順調に進んでいます。軸部及び斗を組み終えたあと、軒廻りと軸部の貫の締め固め作業を行っています。
まず、軸部の貫の締め固め。これは、足固め貫や内法貫と柱の交点に楔を打ち込み、軸部を固める作業です。それぞれの貫は通し貫で、貫の通る柱の穴を、縦に1寸ほど大きく穴を開け、その隙間にバチ形をした楔を打ち込み、柱と貫を一体化させ、建物を固定させます。日本建築の貫は、一般的には通し貫で、各柱通りを、縦・横、建物の端から端まで通っています。しかし、一本物で通すのは施工上不可能なので、柱の中で継いでいるのですが、そこに楔を入れることによって、継手が外れることも無くなり、貫と柱が一体化し、その剛性によって水平力や耐震性がとれる構造となっています。
貫の締め固め作業と並行して、軒廻りの組立を行っています。丸桁に地垂木を載せる作業から始まり、保福寺本堂は二軒(ふたのき:垂木が二重になっている)なので、地垂木の上に木負(きおい)を載せます。そして、次に飛檐垂木(ひえんたるき)を載せ、更に、茅負(かやおい)を載せて、軒が構成します。垂木には反りがついているのですが、地垂木は、先端で上部の反りが強くなっています。したがって、先端の背が高く、力強さがでます。飛檐垂木は逆に、下端の反りが全体的に強く、先端で細くなっています。このようにする事で、軒先に軽快感を持たせ、手前の支える部分には力強さを感じさせる様にしています。また、建物の隅部の柱を伸ばし、それによって軒がねじれる、「隅伸び」の手法も取り入れています。軒の反りが、建物の内側から少しずつ緩やかに反りあがって行く、落ち着いて軽快感のある軒廻りになります。これらの手法は、中世の建物に使われているもので、保福寺本堂では、そういった日本古来の素晴らしい技術を、積極的に取り入れた設計をしています。
日本建築の最大の見せ場である軒廻り。大工さん達は、毎日、暑い中大変でしょうが、この軒廻りによって、建物が決まってしまうと言っても過言では無いほど、重要な工程です。頑張って、きめ細やかな作業をお願いできれば、と思います。皆さんもお盆休みで英気を養えてきた事でしょう。暑さも、もう少し。頑張って乗り切りましょう!私も、大工さんたちと一緒になって、作業の様子を監督したいと思っています。そして、美しい建物を残していければ、この仕事、本望です。