2003/02/21 もう少し「分離発注」のこと
現在、我が家は外構工事などエクステリアを進行中です。その間をぬって、今回は、我が家の工事発注方式についてもう一度詳しくふれたいと思います。
我が家の新築工事には、従来からよくある、特定のハウスメーカーや工務店への一括発注ではなく、個々の業者さんに専門分野をそれぞれお願いする「分離発注方式」をとりました。
まず、なぜそうしたかったのか、を説明します。
私は上野原建設組合の組合員であり、当然ですが建築関係の職人に多くの仲間がいます。今後、私はその仲間たちと建築主の主導による分離発注型の、いわゆる最近マスコミなどで話題になっている「オープンシステム」(私は、建築主と建築士、そして各業者が対等の立場でいっしょに意見を出し合い、いっしょに家を建てる、と言う意味で「イコールパートナー・メソッド」と呼んでいます)による個人住宅建築を推進していきたいと考えています。ただ、いくら推進しようとしても、そのノウハウなど未知数の部分も多い所があります。そこで今回、我が家をモデルケースにして、上野原建設組合の組合員から見積り等のコンペを経て、実際に試してみようと考えたわけです。
試行ではあるものの、実際施工してみて、設計者としてはもちろん建築主としての立場も自ら経験したわけですから、メリット、デメリットなどいろいろ見えてきました。
まずメリットです。この方式では、各職人さんが着工前に建築主と直接会って契約しますので、初めからスムーズなコミュニケーションがとれます。したがってお互いの顔が見えたしっかりと責任の持てる仕事が期待でき、後々のメンテナンスなどアフターサービスまで安心できるということが言えます(かといって他の場合のすべてが、いいかげんな仕事をしていると言う意味では決してありませんのであしからず)。
次のメリットは建築主の一番気になるコストです。コスト部分ではハウスメーカーや工務店が使用資材などに付けている手数料が削減できます。また、広告宣伝や営業経費、事務費・機器類・工場・資材置場などの固定経費も削除できることになります。こういった経費の削減によって工事費は確実に下がるわけです。
建築主自身の「納得性」もメリットと言えるでしょう。この方式ですと、建築主自身が積極的に工事に関わらざるを得ませんから、自分の家を建てている実感と責任が生じます。この辺をわずらわしくて面倒だなと思う人にとってはデメリットかも知れません。しかし自宅の新築という、昔なら大普請をするわけです。それを人任せでなく、家族全員が家造りに参加することは、家族間のコミュニケーションや施工後暮らしていく中での満足感にも大きな違いをもたらすと、私は考えています。
今度はデメリット。先ほど言ったように、工事に関わらなければならないことを、わずらわしいなと感じるのであればそれが最大のデメリットです。
もう一つ、これを言うのは痛し痒しなのですが、私たち設計者への報酬が増えることがデメリットと言えるかも知れません。通常の設計監理であれば工事費の5%程度の設計監理料ですが、分離発注の場合、その他に、建築士が建築主の立場で、施工を細かく管理するための施工管理料が、やはり5%程度必要になるからです。合計10%。それでも工事費を2割削減できれば、十分お釣りは来ます。
これが高いか安いかの判断はそれぞれにお任せいたしますが、何より既製品ではない、家族の形態や将来のこと、そして好みを十分反映したほんとうの「我が家」が作れることを考えれば、決して損ではないはずです。とりあえず我が家の場合、私の通常の報酬を算入したとしても、かなり安くできたのではないかと自負しています。
いろいろ、長々と書いてしまいました。最後に結論として言えるのは、良い家を安く、しかも誰も損をすることなく建てるためには、この分離発注方式はやはり「良策」です。「最良策」と言うまでには、私自身、もっと考えていくべき部分もありますが、それはこれから今回の工事をゆっくり振り返って、確かめていくつもりです。皆さんもご自宅を新築・改築なされる際には、こうした方式もあるということを忘れないで、ぜひ考えてみてください。