2003/03/10 「我が家をプランニングする」の勧め
天候に左右されながらも、我が家はただいまエクステリアの工事が進行中。文字通りの「完成」までは、あと少し時間が必要なようです。というわけで「完成宣言」は次回かその次に譲るとして、今回は家の「プランニング」について少し話したいと思います。
プランニングとは「企画の立案」であり、どういった家にしたいか、という施主の希望を実現する上で、注文建築には欠かせない作業です。とりあえず、我が家を例にとってみましょう。
まず我が家の建替え計画が沸きあがったのは、自宅内にあった私の事務所が手狭でどうしようもなかったことと、子供の成長に伴い住宅も広くしなければならないなどの事情からです。今の住宅をリフォーム、または新築して、事務所は別のどこかに借りようか、というような選択肢もあったのですが、結局私が長年抱き続けていた日本建築の伝統技術を最大限取り入れた家を、事務所併用住宅として実現してみようと決意し、全面的な新築となったわけです。
以前、間取りのプランニングを紹介した時も触れましたが、私が設計事務所の自営ですから、事務所を取込んだ併用住宅であることが第一の条件です。第二に、私が車好きなので、仕事場にガレージを隣接させたい、という趣味的条件がありました(あわよくば事務所と車庫がワンフロアーになっても良いくらいに思っていたのですが、妻の「なに考えてんの」の一言で却下・・・)。わがままなようですが、ここは私が一番長く居るところですし、仕事をしながらも車を眺めたい!という願望は譲れません。したがって事務所内の机・本棚など什器の配置、窓のレイアウトと高さ、外観からのイメージなどを考慮し、さらには和風建築とガレージの違和感をどうなくすかなど、かなり考えました。今、エクステリア・ガレージの仕上げ工事中で、まだ十分には使えませんが、完成が楽しみなところです。
ただ事務所と車庫を一階に構えることで、自宅用玄関のスペースが狭くなるという問題が出てきました。そこで玄関は狭くても空間の広がりを感じさせられるように、脇玄関の収納スペースを設け階段と2階廊下は船枻(せがい)造り風に、出し桁に手すりを付け小屋組も見せることで何とかクリア。
次に2階の居間です。「和風」ということにこだわった私は、ここには囲炉裏を置きたいと思ってました。冬の雪降る寒い日とかに火を焚きながら、家族や仲間と一杯やれたらいいだろうなー、というわけです。そうなると、煙が問題になります。そこで吹抜けがあって、煙出しをつけ、そこに釿(ちょうな)はつりの梁を架けるプランを考えました。また、このプランに伴い、北西の比較的暗い位置にきてしまったキッチンは、天井を吹抜けにし屋根にトップライトを取り採光と換気を良くすることで、明るいキッチンを望む妻の希望に応えることにしたのでした。
3階は屋根を延長した、いわゆる屋根裏部屋ですが、収納だけでなく、将来的には子供たちための部屋とすることも考えた自由な空間としました。さらに一階南の両親の居室には、小さいながらも庭が作られるようにしたり、将来のために廊下には車椅子の通れる幅を確保したりと、限られた敷地の中で随所にさまざまな配慮をしたつもりです。
このように、人が、家に合わせて住むのではなく、人の住み方にに合わせて家を造る、というのが、注文建築におけるプランニングの基本です。あたりまえのことですが、ここをしっかりやらないと、注文建築で家を造る意味はありません。私が設計したあるお宅は、ご主人の趣味である盆栽の作業場をリビングに隣接させることで、家族とコミュニケーションをとりながら盆栽の手入れもでき、尚且つ棚に盆栽を並べ、リビングから眺められるようにしました。この時は洋風なリビングにも和の盆栽も合う仕切りの建具もデザインし、お客さんにとても喜んで頂きました。また、あるお宅ではホームシアターをするため防音した部屋を設けたり、あるいは建ぺい率・容積率の制限上、書斎の部屋がとれないため階段ホールの空間を利用した書斎コーナーをとるなど、お客さんのニーズに合わせた設計をさせていただいたこともあります。家族構成、その暮らし方、趣味、将来への布石、敷地条件、法的制限、コスト問題など、プランニング段階で考えるべき事は数多くあります。自分で自由にプランニングしてみるぶんには、お金もかかりません。まだ家を造る計画のない方も、実際に家を建てるなら、という前提で、とりあえず方眼紙を前にプランニングを楽しんでみてはいかがでしょう?今のご自身の暮らし、ご家族との暮らしをあらためて見直すうえでも、とても有意義な作業になると、私は思ってます。