2005/12/19 番外編 「構造計算偽造問題について その2」
構造計算偽造問題も姉歯元建築士などの証人喚問で、総合経営研究所の内河という黒幕が介在していることもわかりました。今後は警察や司法に委ねられるでしょうから、陰の部分が、洗いざらい表に出てくるのを見守りたいと思います。
前回の日記のあと「じゃあ、木造住宅の構造計算はどうなってるの?」というご質問をいただきましたので、今回は私の最も多い業務である木造住宅についてお答えしたいと思います。
●『 2階建て以下の木造住宅には、構造計算は必要ありません』
木造以外の建物、即ち、今回の問題になっているマンションやホテルのような鉄筋コンクリート(RC)造、または鉄骨(S)造などの場合、床面積が200㎡を超える建物、もしくは2階以上の建物の場合は、構造計算をしなければなりません。また、木造の場合でも、床面積が500㎡を超える建物、もしくは3階以上の建物の場合は、構造計算をしなければなりません。しかし、一戸建ての住宅など木造2階建て以下の建物には、構造計算の必要はありません。
しかし、だからといって好き勝手に建てられるかというと、そういうわけにもいきません。つまり、建築基準法では「構造強度」に関する規定が設けてあり、基礎、土台、柱、梁、筋違いの入った耐力壁など、こと細かく仕様が定められています。また、構造計算まではいきませんが、外壁や屋根材の重さに応じた、地震力に対する「耐力壁」の算出が必要です。これは、地震時の水平力に対するもので、耐力壁を建物全体にバランス良くレイアウトしなければなりません。また、強風による風圧力に対する耐力壁の算出も行います。さらに、それらの耐力壁を接合する金物や、土台や梁と柱を接合する金物なども定められています。2x4(ツーバイフォー)の場合も同様です。ただし、大手ハウスメーカーなどのプレハブの場合は、それぞれの型式で国土交通大臣の認定を受けており、個別にこういった計算を行う必要はありません。要するに、構造耐力上、安全とされるユニット化されたパネルを組上げることになるからです。
● 『当然、構造設計図の添付も不要です』
次に、一般住宅の確認申請について。構造計算が必要の無い建物の場合、このような構造設計を行っても確認申請に添付する必要はないんです。行政庁によって若干の違いはありますが、私が業務を行っている地域では、東京都と神奈川県では構造設計図の添付は認めないか、付いていても審査をしないとか、基本的に審査の対象ではありません。地元の山梨県では、構造設計図を添付し審査して頂いていますので、審査項目の対象になっているのだと思います。このような行政による違いの理由は、数年前の規制緩和によって審査項目から外され、現在は基本的に、設計者である建築士にその責務を委ねた形になっているためです。しかし、今回のような事件が起こると建築士の「性善説」も疑われ、私の家ってホントに大丈夫なの?と疑心暗鬼なる人も多いのではないでしょうか?ちなみに、私はお施主さんに設計図の説明を行っていますので、ご理解いただけてると思いますが、もし気になる方は、お気軽にお問い合わせください。また、設計はきちんと行なわれていても、施工が設計の意図する事と違うように行なわれていれば、何にもなりません。建築士としては、工事監理もしっかり行わせていただき、皆さんが安心して暮らせる家を提供していかなければならないと、私は思います。
● 『施主と建築士の信頼関係こそ重要な時代』
そんな訳で、今回の事件は、我々建築士にも、社会全体に対しても多大な影響を与えています。これからは「建築士性悪説」を前提に制度の改正や審査方法などいろんな面で厳しくなるかもしれません。しかし、私はやはり、建築士が行なう設計監理というものは、信頼関係でこそ成り立つものだと思います。クライアントが何を望んでいるのかを理解し、可能な限り希望に添うものを、法令を遵守するだけでなく、プロとして安全性に絶対の自信を持ったうえで提供する。お互いの意思の疎通ができてこそ、納得のいく設計ができ、監理ができて、自信を持って提供できるものだと思います。確かに、この業界に限らず、うさんくさい輩も居るのは事実ですから、制度の改定は必要でしょう。でも、私の場合は自分の仕事のやり方に誇りを持っていますので、今まで通り、自分のスタンスでマイペースに仕事をして生きて行けば良いと思っています。このところ、この事件に限らず、幼児や児童を狙った殺人とか、憂鬱になる事件が多く、日本人ってどうなっちゃったの?と思うことばかりです。しかし、私はやはり、日々の暮らしは、人と人との信頼関係によって成り立っているし、信じ合えると信じたい。それを少なくとも自分の回りで実証できるように、私はこれからも、人と人との付き合いを大事にし、良い仲間と良いお客さんに囲まれて頑張って行きたいと思います。
今年も残り後わずかになりました。寒い毎日が続いています。皆さん風邪など引かぬよう健康に気を付けて良いお年をお迎えください。