「保福寺本堂地鎮祭・釿始式」
先頃の暑い毎日が嘘のように、このところ涼しくなりましたが、如何お過ごしでしょうか?先日の9月27日、上野原の保福寺で、本堂新築の地鎮祭ならびに釿始式(ちょうなはじめしき)が行なわれました。今回はその式典について書きたいと思います。
地鎮祭(自宅造り日記の地鎮祭を参照)は皆さんご存じだと思いますが、一般的には、神主さんが来て、神式でするものだと思っているのではないでしょうか。では、お寺の場合も、神主さんに来てもらうのかというと、そうではありません。仏教でも地鎮祭はあります。したがって、今回はご住職さんが執り行いました。
四隅に竹を立て、幣束を付けたしめ縄を張り巡らせた空間で式を行います。これは神式となんら変わりありません。正面には、神式は鏡ですが、仏式では御本尊様を中央に安置します。ご供物、蝋燭、線香など仏式の道具を飾ります。
式の流れも神式とそれほど変わらず、手水桶で清めて会場内に入り、開式します。ご導師様が入場され、全員で拝礼し、ご導師が祝詞にあたる啓白文を奉読します。その後、散華道場という、蓮の花にみたてた色紙を撒いて諸仏の供養をし、そして、読経へと進みます。大般若経転読で太鼓と読経の鳴り響く中、私達のお焼香が始まります。地鎮祭参加者全ての方のお焼香が終わるまで、大般若経転読が行われ、消災咒(しょうさいしゅう)と言う、災いを消すお呪いのお経が唱えられて、地鎮祭もいよいよ終盤。刈初の儀(かりぞめのぎ)で、設計者である私が、茅を三度エイエイエーイと掛け声で刈り、穿初の儀(うがちぞめのぎ)で、施主である檀徒総代さんが、鍬で土を掘り、施工者が鋤で土をすくう所作を、刈初の儀と同様、三度行います。そして、五穀を奉納して鎮物とし、鎮物を埋納させて、儀式は終了します。最後に、回向(えこう)を行い、全員で拝礼し地鎮祭は終了しました。
その後、引き続き、釿始式が執り行われました。釿始式は寺院や神社などの重要な建物の工事に先立ち、工匠の一連の作業である、用材の採寸から墨付け・加工・仕上げまでの工程を儀式化して、御本尊様や神様に奉納する儀式です。素襖(すおう)に烏帽子を身に纏った古式な出で立ちの工匠達が行います。
まず、墨矩ノ儀(すみかねのぎ)。柱に使われる2尺幅の八角のチーク材の両端に工匠が赴き、差し矩(さしがね)と墨差しで、採寸と矩を出す所作を三度行います。次に墨打ノ儀(すみうちのぎ)。墨壺の糸を張り、墨を打つ所作を
墨矩同様に行います。最後に、釿打ノ儀(ちょうなうちのぎ)で、木材を釿で削る(はつる)所作を行って終了となります。それぞれ、総棟梁の指揮号令のもと掛け声とともに三度ずつ行います。こういった古式に則った儀式はあまり行うことがなく、私も善教寺本堂以来の2度目です。実際、衣装や道具、儀式そのものを知っている、宮大工の棟梁さんが少なくなって来ているのが現実だと思います。
こうして、滅多に観ることの出来ない釿始式も無事終了し、施主を代表して檀徒総代さんの挨拶と乾杯。そして、設計者の私と、施工者が挨拶をして、式典は無事終了いたしました。
これから、本格的に工事が始まります。2年後の完成を目指して身の引き締まる思いです。施工者である藤田社寺建設の皆さんと共に立派な本堂を造る所存です。住職様を始め、壇信徒の皆様、改めてよろしくお願いいたします。
また、ホームページをご覧頂いてる皆様にも、工事の様子は、この私の建築旅日記で逐次、報告したいと思いますので、よろしくお願いいたします。