旅の九十五:「旧朝香宮邸茶室「光華」/港区白金」
3月11日に発生しました東日本大震災により、被災された皆様にお見舞い
申し上げます。一日も早い復興をお祈りいたします。
私にも応急危険度判定の要請がきましたが、仕事の都合上、今回も行け
そうにありません。少しでもお手伝いしたかったのですが・・・。
この大震災により更新が遅れてしまいましたが、今回は都内にある茶室の
調査について書きたいと思います。
先月、港区白金にある東京都庭園美術館の旧朝香宮邸茶室「光華」の調査に行ってきました。旧朝香宮邸は朝香宮鳩彦王の邸宅です。フランス滞在の
折りにアールデコ博を観覧し深い感銘を受けた朝香宮ご夫妻が建設に
積極的に取り組まれ、昭和8年(1933)に竣工した邸宅は、日本における
アールデコ様式の代表的な建物です。その広い敷地内の日本庭園の中に
茶室が建てられています。
今回の調査は耐震診断調査によるもので、久米設計さん主導のもと、
山辺構造設計さんのお手伝いとして、茶室の建物現状調査を行っています。
茶室「光華」は数寄屋大工「平田雅哉」棟梁によって、昭和13年に建てられた草庵茶室です。
平面構成は立礼の席・広間・小間の3席の茶席で構成されています。
立礼の席は四半敷き瓦を敷き込んだ土間形式の椅子席で、外国人向けに
考案された茶席のようです。広間は9畳の本勝手(茶席で亭主の右側に
お客さんが座る場合)で、1畳の床の間が付いています。小間は四畳半の
逆勝手(亭主の左側にお客さんが座る場合)で、台目床(ダイメドコ:1間より
幅が狭い床の間)が付いています。その他に、水屋やトイレなどが設けられています。
柱は杉の面付で、敷鴨居も杉材の厚さ1寸以内とし、壁は土壁で京聚楽塗り
とし、建具も細い部材を巧みに組み立てています。また、外部は入母屋の
桟瓦葺き屋根に栩(トチ)葺き型銅板葺きの腰葺きを施した複雑な屋根に、
杉丸太や竹の化粧垂木を用い、竹の節を千鳥にするなど、細部まで
手の込んだ造りとなっていました。
小屋裏に入ると、草庵茶室の華奢な外観から想像してたのとは違って、大きな梁が縦横に架かり複雑な屋根を支えていました。
しかし、主たる柱などは細い面付柱などで構成されており、耐震構造上は
どうなんだろう?という感想を持ちました。構造上のことは山辺構造設計さんが検討されており、大丈夫だとは思いますがちょっと心配です。
庭園には梅が咲き、池へ水が流れ、静かに眺めていたい気分でした。
今度、落ち着いて眺められたら良いんですけど、皆さんも機会がありましたら訪ねてみて下さい。